研究内容

研究テーマ1

ゲノムの超高速シーケンシンサーによる解読

次世代シーケンサーと呼ばれる最先端技術が飛躍的に進み、ひとりのヒトゲノム30億塩基対を数週間足らずで30回ほど繰り返し解読することが可能となりました。われわれは、この技術を駆使して、個々人のゲノムにどういった違いがあり、その違いがどういった生物学的影響をもたらすか、網羅的な研究を進めています。そのために、まず、高速かつ精度高くゲノムを解読するプラットフォームが必要となります。

1)網羅的にゲノム全体を解読する全ゲノムシーケンシング

2)網羅的にタンパク質コーディング配列を解読する全エキソームシーケンシング

3)特定領域に特価して解読するターゲットシーケンシング

などなど目的に応じて、また、利用可能なシーケンシング方法に応じて、解読プラットフォームを構築します。

研究テーマ2

変異の超高速高精度検出

変異には1塩基置換や数塩基の欠失挿入といった小さな変異から、数kbから数Mbにもわたる欠失、挿入、逆位、転座、重複といった大きな変異までさまざまな種類があります。それぞれの超高速シーケンサーの特長を活かして高速かつ高精度に変異を検出するパイプラインを構築します。また、従来の変異検出法では見過ごされていたり、間違って変異とされがちなエラーも検出してさらに精度の高い変異検出系の確立を目指します。

研究テーマ3

変異と病気

変異が原因となって特定の遺伝病を発症することがあります。また、変異が遺伝的要因となって特定の病気に罹りやすいといった遺伝的体質にも影響します。そういった原因となっている変異を同定することで、診断や発症の予測が可能になります。さらには、疾患そのものの発症のメカニズムの解明につながり、予防法や治療法の開発にもつながっていきます。また、ヒトの病気の原因となる変異が見つかった場合、同じ変異をもつモデル動物を開発することで疾患モデル動物を構築することもできます。そういった一連の技術も開発します。

研究テーマ4

変異と環境変異原

放射線や化学物質によって変異が生じることがあります。とくに、環境中に含まれる変異原の研究には、そもそも、変異原が全くない状態でどのくらいどういった変異が生じているか、バックグランドでの変異がわからないと、変異原がどのくらいの影響があるか、正確な理解が得られません。自然発生変異がいつどこでどのくらい生じているか、マウスをモデルとして明らかにすることで、微量な放射線や化学変異原の影響を高精度に評価できるシステムも開発します。

研究テーマ5

変異と進化

変異によって、同じ生物種でも、遺伝的に異なる個体が生まれてきます。そういった変異が一定以上の頻度で集団に維持されると、多型(たけい)と呼びます。変異によって多型を蓄積し遺伝的な多様性が集団に生まれます。そこに自然選択と適者生存の原理が働き、生物は適応放散してきたとダーウィンは考えました。いつどこでどのような変異が生じるか、そして、その変異が集団内でどのように頻度を変化させ固定させていくか、この繰り返しによって進化してきました。すなわち、変異の検出と研究は直接、進化の研究につながっていきます。